一度やめた直播栽培。再び直播栽培にチャレンジした理由とは? - 「第12回 農業Week」でユーザーがリゾケアXLでの栽培体験を語る -

2022年10月12日(水)~14日(金)の3日間にわたり千葉県の幕張メッセで開催された日本最大級の農業系に関する展示会である第12回 農業Weekに「水稲湛水直播向けソリューションRISOCARE(リゾケア)」としてブース出展しました。今回はリゾケアXLをお試しいただいた複数の生産者様をお招きし、インタビュー形式で体験者の生の声をお届けしました。そのうちのおひとり千葉県南房総市の 株式会社岡本農園の岡本秀和さんにお話いただいた「リゾケアXLを使った直播栽培の実体験」と「農業経営の将来」についてご紹介します。
一度はやめた直播栽培、将来を見据えて再チャレンジ
お話を伺った岡本農園が管理する水田面積は24ha。水稲苗の販売も行っており、3万枚/年を育苗して近隣生産者に提供されています。また夏季には育苗ハウスを使用してトマトも栽培されていらっしゃいます。
【岡本農園の育苗ハウス(左)と夏季に同じハウスで生産しているトマト(右)】

|これまでの直播栽培の取り組み経験を教えてください。
「リゾケアXLを使っての直播は2022年が初めてですが、岡本農園は過去に鉄コーティング直播を4年間続けた経験があります。その後、高密度播種栽培技術がでてきたことで、自社の強みは育苗ができることであると認識し、鉄コーティングによる直播はやめていました」
|鉄コーティングでの直播をやめた理由として、苗立ちの課題があったようですが…
「4年間やってみて、鉄コーティングでの直播はレーザーレベラーありきの技術ではないかと感じました。弊社はレーザーレベラーを所有していませんから、どうしても圃場の均平がとれず苗立ちが安定しませんでした。なので、高密度播種でコスト削減に挑んでいました」
「それでも、5年10年後の将来を見据えたとき、どこかで更に経営の効率化を実現する必要があることは明らかです。育苗も生業としていますが、一生産者、一経営者として、新しい技術を自分の目で確かめて取り入れていかなければならないと思っていました。
そんなときRISOCAREが発表されたことを知り、『湛水状態でも苗立ちが見込める』という資料を読み興味を持ちました。そこで今年、試験栽培をさせていただくことにしました」
「岡本農園では3年前にドローン(DJI MG-1)を導入して、主に水稲の除草剤散布に使用しています。リゾケアXLの散播なら、播種機を新たに購入せずとも、ドローンを活用できます。ドローンを所有していたこと、ドローンとリゾケアXLとの相性の良さもまた、リゾケアXLで直播に再挑戦する後押しになりました」とリゾケアXLを試してみようと思われた理由をお話いただきました。
【リゾケアXLで直播に再チャレンジされた株式会社岡本農園の岡本秀和さん】

リゾケアXLは播種前日に代かき が可能。ドローン播種もマニュアル通りで簡単でした。
■岡本農園が実施したリゾケアXL直播栽培試験概要
・品種:コシヒカリ
・圃場サイズ:24a(紹介した圃場以外に合計約1ha(4筆)でリゾケアXLを試験)
・播種方法:ドローンによる散播(DJI MG-1)
・代かき実施日:4月19日
・播種日:4月20日
・播種量:約3.1kg/10a(乾もみ重)
・苗立ち率:98%※
※50㎝四方枠内の苗立ち本数(3か所の平均値)および播種量よりシンジェンタジャパンが算出。
|リゾケアXLの試験圃場では、播種日の前日に代かきを実施したとのことですが…
「当地は重粘土地帯ですので、一般的な移植(栽培)では、代かきから田植までに3~5日、長いと一週間ほど間隔を開けねばなりません。リゾケアXLを使っての直播は前日でも大丈夫ということでしたので、作業スケジュールの面で助かりました」
【岡本さんとリゾケア直播についてインタビューするRISOCARE事業部プロダクトマネージャーの大泉】

|播種方法はドローンでの散播をされたとのことですが、実際にリゾケアXLをドローン播種してみた感想をお聞かせください。
「自分でドローンを操縦し播種したのですが、リゾケアXLのドローン播種マニュアルを参照して、シャッター開度や播種スピードは、マニュアル通りにやって簡単できましたね。また、種もみからはほとんどダストが出ませんでしたから、作業する人とドローンに対して優しい技術だと感じました」(リゾケアドローン播種マニュアルはこちら)
|播種日は4月20日という早めかなと思いますが、どのように播種日を決められたのですか?
「鉄コーティングを行っていた時に調べたのですが、試験圃場のある地域は4月20日前後が平均気温13度くらいになります。これが早期限界であると考えて、その日に播種しました」と過去の経験を踏まえて設定されたことを明かしてくださいました。
苗立ち率は98%!湛水でも発芽するリゾケアXL
|試験圃場の苗立ち率の調査の結果は98%という高い苗立ち率でしたが、リゾケアXLの苗立ち、初期生育についての感想をお聞かせください。
「リゾケアXL最大のメリットである『苗立ちの良さ』は実感できました。播種から6日後には出芽が確認できたので、『早い!』というのが第一印象。鉄コーティングでは少しでも水たまりがあると苗立ちが見込めませんが、リゾケアXLは多少の水たまりがあっても苗立ちしていました」とのこと。98%という高い苗立ち率には、ご来場いただいた聴講者の方からも、驚きの声が聞かれました。
【5月12日 播種22日後】

【5月30日 播種40日後】

【7月25日 播種96日後】

適切な水管理と適期の除草剤処理で雑草問題は改善できる
|もう一つ、直播の課題には雑草対策があると思うのですが、今回どのような雑草管理をされましたか?
「4枚の圃場のうち1筆だけは播種時に初期除草剤を処理しました。それ以外の3筆は初期剤を処理せず、3週間後に初中期一発除草剤を散布しました。その結果、ほぼ問題ない圃場もあったのですが、少しノビエとホタルイが出てしまい後期剤で対応せざるを得なかったのです」と悔しそうに語りました。
インタビュアーを務めた大泉からは「少し除草剤の処理タイミングが遅れてしまったようですね。今回のリゾケアXLの試験では播種約6日後には出芽が確認されているので、(播種3週間後よりも)もっと早い段階で初中期一発除草剤が処理できるイネ1葉期には達していたと思います。少しノビエとホタルイが残ってしまったとのことですが、もう少し早い段階で初中期一発除草剤を処理できていれば、改善できる部分はあるのではないかと思います」と今後の対策についてコメントがありました。
【鉄コーティングとRISOCAREの水管理と除草剤散布タイミングの比較】

届いた種子を播くだけで、苗立ちもよく、収量もまずまず
|リゾケアXLを試してみて、全体的なメリットや感想をお聞かせください。
「鉄コーティングでは自分でコーティングする必要がありますし、コーティング後も霧吹きで酸化させたり、ブルーシートに広げて酸化熱をとったりと意外とコーティング後の作業も煩雑です。リゾケアXLはコーティングされた種子が製品として送られて来ます。その分コストはかかってきますが、『コーティング作業しなくて良い』というのは大きなメリットだと思いました」
「久し振りの直播でしたので、出芽するまではドキドキしましたが、ちゃんと苗立ちするとやはりうれしいですね。周りの人たちも興味深々だったようです。そこそこの圃場になってきたので、やってみてよかったなと思っています」と率直な感想を語っていただきました。
「収量については今回の品種はコシヒカリで、移植に比べると1俵ほど少なかったですが、今後は耐倒伏性のある品種にして、基肥の量も調整することで収量は改善していけるのではないかと思っています」と岡本さん頭の中にはすでに来年に向けての課題解決の道筋のイメージがあるご様子でした。
自分の目で確かめて感じたリゾケア直播の可能性
|将来を見据えたときの、リゾケア直播を取り入れるメリットや期待値をお聞かせください。
「今、あらゆる資材が高くなっていますし、米価が上向く見込みもありません。『どこでコストを下げるのか』が、今後より大切になると感じています。それぞれの経営体で『育苗ハウスを作れない』・『労働力が足りない』など個々の課題があると思いますが、直播を一部取り入れていくことで、それらを補える可能性を感じました」と冷静に現状分析する岡本さん。
「ドローン播種でリゾケアXLでの直播にチャレンジしたのも、新しい技術を自分の目で確かめたかったというのがあります。1年の結果では良し悪しを判断するべきではないと思っていますが、来年以降も継続して、品種を変えたり、除草剤の体系を見直したり、水管理を変えたり、と試しながら、リゾケア直播を続けていきたいです」と将来を見据えて新しい技術を意欲的に取り入れて課題解決に取り組む岡本さんのお話に、ご来場いただいた聴講者の方々も熱心に耳を傾けていらっしゃいました。
